魔法使いピピン✡きょうもしゅぎょうちゅう!

 このグリフォンは、ことばがしゃべれるようです。
「わたしは、ピピン。この子をまほうつかいの森で見つけて、ここまでつれてきました」
「その子は、おくびょうでしてね。このあいだの台風のカミナリをこわがって、ここから、にげだしてしまっていたのです」
「おくびょう……グリフォンなのに?」
 ピピンがいうと、うでのなかで、グリフォンが、ぴいいとなきました。
 そのなき声は、なんだかとてもかなしそうに聞こえます。
 ピピンは、むかしのことを思い出しました。
 まほうがぜんぜんうまくいかないときに、いじわるな子にいわれたことば。
「まほうつかいなのに、まほうがへたっぴなんて、へんなのー!」
 みんな、おぼえたことはすぐにできちゃうのに、ピピンだけ時間がかかってしまいます。
 かなしくて、くやしくて、あせります。
 はやくおぼえたいのに、たくさんがんばっても、ピピンだけおいてけぼり。
「ごめんね。グリフォンちゃん」
 ピピンは、うでのなかのグリフォンにあやまりました。
「おくびょうだって、いいよね。わたしったら……ひどいこといっちゃった。だから、ごめんね」
 ぎゅっとだきしめると、グリフォンはうれしそうに、ピピンのほっぺたにすりよりました。
 すると、おとなグリフォンがいいました。
「その子は、とてもあなたになついているようですね」
「そうなんですか?」
「ええ。とっても」
 そのとき、ピピンのポケットに入っていたエメラルドが、ピカッと光りました。
 なにがおこっているのかわからないピピンに、おとなグリフォンがいいます。
「あなたのまほうのちからに、その石がはんのうしているようです」
「どうして……?」
 うでのなかのグリフォンが、なにかをうったえるように、ないています。
 まさかと思いながらも、ピピンは、グリフォンをじめんにおろし、エメラルドをにぎりました。
 もってきていたクローバーのみつのビンに、エメラルドをひたし、まほうじんをえがきます。
 そして、じゅもんをとなえました。
「パッピン ピピンプ ペペペン ポン。わたしのパートナーよ、あらわれて!」
 まほうじんが、まっしろに光ります。
 すると、グリフォンのすがたが消え、かわりにまほうじんのなかに、みなれた小さなかげが、うかびあがりました。
 光が消えると、そこには、谷までずっといっしょだった、グリフォンがすわっていました。
「……グリフォンが、わたしのパートナー?」
 うれしさに、まほうじんのなかへとびこみ、ピピンはグリフォンをだきしめました。
 おとなグリフォンが、ほほえましそうにわらいました。
「その子は、まほうつかいのパートナーとなったのですね。では、谷から送り出させねばなりません」
 おとなグリフォンが、ピピンたちにせなかにのるよう、いいます。
「上までもどるのは、たいへんでしょう。おおくりします」
 ピピンは、ぺこりとあたまをさげ、おれいをいいました。
「ありがとうございます。あの、あなたはこの谷の長老さんですか?」