海を越えて、きみが好き

圭から手紙が届いた翌日。今日は月曜日だから勿論、学校はある。けれど行きたくない。だって頭の中には圭のことしかないし、学校に行ったって他のことは頭に入らないはず。でもしょうがない。私は嫌々ベッドから身を起こした。顔を洗って、制服を着る。去年から毎日こうしてきたはずなのに、圭がこの世界のどこにももういないことを知ると私がこれからも生きていく意味なんて失せる。圭が好き、でも、もうこんな死んだ相手に恋するなんてやめたい。でもそれじゃ、圭が死んだことを本当に認めたみたいでヤダ。
「百華、おはよう」
隣の部屋から同じ制服を着て出てきたのは、ののか。二卵性だからか全く似てないけど一応、双子の姉。
「あ、ののか、おはよう」
ののかは私に圭から手紙が来てることも、私が圭を好きなことも知らない。別に仲が悪いわけではない。むしろいいと思う。見た目は正反対だけど、性格は少し似てて少し違う。物心ついた頃から一緒。でも去年からののかが少し冷たくて、私も双子だからなんでも秘密は無しっていうのもおかしいと思ってる。でも親友の小池菜々こと菜々にはメッセージで全てを相談してる。黒川要さんに会いたいっていうことも。
私が立ち止まっているうちに、ののかは1階に降りていった。
「百華、おはよう」
お母さんだ。お母さんと言うには若すぎるかもしれない。だって私とは20歳差。つまり私はお母さんが20歳の時に産んだ子。お母さんは今も33歳。
そして、お母さんはののかの事を避けてている。一応、親として最低限の世話はしているけど、それ以上は会話もしないし、挨拶も私にだけする。小学生の頃に一度だけお母さんにののかが嫌いな理由を尋ねた。そしたら、思って見たこともない事を言われた、
「ののかのことは嫌いじゃないのよ。けれど苦手なの。自分で産んだ子をこう言うのもなんだけど、ののかは私の知らない世界をたくさん知ってるの。輝かしい世界とか、上下関係の世界とか。ののかがその私にとっては未知の世界のことをののかが話すのを見て怖いの。この子はいつか私とは100%違うものになってしまう、そのことがね。その点、百華とは似てる様な気がするから」
と。
「お弁当ありがとう。いってきます」
そういって私は家を出た。朝ごはんは毎日1000円を渡すからやりくりして好きに食べなさいと言われてる。だから私はいっつも家の隣のカフェで菜々と食べてる。