海を越えて、きみが好き

私・高山百華。中学2年生で優しいってよく言われる。特に目立った特技とかはない。そして密かに、3年前アメリカに引っ越した幼馴染・圭を思ってる。でも、音信不通なわけじゃなくてちゃんと毎月手紙が届いてるんだ。内容はちょっと謎だけど。そこまでが圭らしいなって思ってる。
今日は日曜日。そして圭から手紙がくる日。毎月の7日って決まってるんだ。あ、届いてる。早速、読んじゃおう。
破らないように丁寧に封筒を開けて中の便箋を確認する。中にはいつも通り2枚ほどの便箋が入ってた。きっとみんなに送ってるわけじゃない。みんなに送ってたら嫌だ。だって私が特別じゃないから。こんなところまで圭を思ってしまう。圭があっちで恋人を作ってませんようにって毎晩願っちゃう。でも、私と圭はそもそも恋人でもない。私が勝手に恋して圭が私以外に恋しないことを祈ってるだけ。
「高山百華様」封筒には圭の字で確かにそう記してあった。もうずっと届いていて慣れているはずなのに、けれど圭の字で書いてある私の名前を見るとやっぱり嬉しい。これが恋なんだと思う。
そう思いながら、私は三分の一におられている便箋をそっと取り出して一枚目を見た。


百華へ
元気にしてるか?俺は結構前からちょっと体調崩してる。でも少しずつ回復してるところ、心配すんなよ。
いや嘘。全部嘘。体調なんか今の俺には存在しない。今日は一番大事、いや2番目に大事なことを白状する。百華にとっては1番ショックかもしれない。
俺は約2年半前に死んでいる。この手紙は死ぬ前に俺が書いて同級生で唯一日本人の黒川要に送らせているものだ。ずっと隠しててごめん。こっち来てから具合悪くなって、余命半年を宣告された。大差はなく、俺は死ぬはず。いや、百華がこれを見ている時には死んでいる。これ書いたの百華にとっては2年半以上前だから。何も言わずに去って本当にごめん。
俺がストックした手紙は次の手紙で終わりだ。もし機会があったら、黒川要に会ってくれ。俺のことが知りたかったらそいつを頼れ。
今のことを少し書かせてもらう。俺は今入院している。ここで最期を迎えるはず。まぁ百華にとっては過去の話だな。毎日、要が会いに来てくれるから特別退屈することはない。友達は男ばかりで女は1人だけ。友達はめっちゃ来るけど、やっぱり百華に会いたい。最後に一回ぐらいは百華に会いたい。百華だけが特別。他の奴じゃやだ。まぁ叶わぬ望みってやつだ。聞き流してくれ。後悔したりするな。
最後に、次で最後だな、百華。また来月会おう。
      山根 圭