海を越えて、きみが好き

『好き』の2文字が頭に浮かんだ。
いや、駄目。圭が好きなんだから。要くんを気にしちゃだめ。でも圭はもういない。いない人に恋していいの？要くんも気になるなら・・・いや駄目。圭が大事。
こんなにも、初対面なのに要くんがなぜか好き。鼓動の音が聞こえないか心配。それだけ緊張してるし恥ずかしいし要くんには変に思われたくない。
「要くん。」
それしか言えなかった。初対面なのに、口を噤まないと『好き』と言ってしまいそうだから。要くんは圭じゃないのに。なんでそうなるの。苦しい。何もかもが苦しい。
「大丈夫。言わなくても言ってもいいんだよ」
要くんには知ってほしかった。要くんの声で励ましてほしかった。でも『好き』って言ってしまいそうで怖い。
「あの、ずっと前から圭が好きなの。大好きなの」
本当は「でも要くんも好きなの」と続くはず。でも勿論続きは言えない。それが苦しい。