海を越えて、きみが好き

私が予想以上に何も知らなかったことに要くんは驚いている。菜々の声はあんなに嫌だったのに不思議と要くんの声は受け入れられる。でも、圭に会いたい。要くんじゃ駄目。やっぱり駄目。圭の強くて優しい声が聞きたい。泣いてはいない。けれど泣きそうだし、気分はもうグチャグチャ。なんで1日目からこうなんだろう。
「ご、めん。圭のこと、思い出す、とこうなって」
言い訳だった。口から出たのは言い訳。圭を思い出したら、そうなるんじゃない。今はっきりわかったからこうなった。
「一旦、外に出て落ち着こう?人がいない場所なら知ってるから。」
要くん。そして恥ずかしいけど要くんにつられて私は歩いた。下を向いて。こんなの初めて。それだけに圭が愛おしい。