高校最後の文化祭前日。生徒会副会長の私、七瀬(ななせ)瑞希(みずき)は——盛大にやらかした。

 掲示用の大判ポスターを、家に帰ってから「印刷していない」ことに気づいたのだ。
 明日の朝でも間に合うはず。
 ……でも、このままでは気持ちが落ち着かない。
 焦りが喉の奥を熱くして、何度も深呼吸しても息がうまく入ってこない。

 どうしよう——と頭を抱えたそのとき、スマホが小さく震えた。

《今、学校にいる。やり忘れた仕事、今ならできるよ》

 差出人は、桝原くんだった。
 生徒会のチャットには何も流していないし、彼にも言っていない。
 どうして——?
 胸が一瞬、大袈裟なくらい大きく飛び跳ねる。

《今から行く》

 真夜中だったけれど、私の中に〝行かない〟という選択肢はなかった。
 震える指で文字を打ち込み、制服に着替えて家を飛び出した。