私の居場所は、先生の隣!

 ―それから数年経った。時間が経つのはあっと言う間だった。


 春の風が、桜の花びらを空へ舞い上げていた。

 合格通知を受け取った日から、ずっとこの瞬間を思い描いていた……あの日、皆川さんが向かった大学。

 長い石畳の両脇には満開の桜並木が続き、その下を新入生たちが笑顔で行き交っている。

 私は胸の奥で高鳴る鼓動を押さえながら、ゆっくりと歩を進めた。

 そのとき、前方に見慣れた背中が見えた。

 背筋をまっすぐに伸ばし、淡い色のジャケットを着た長身。

 間違いない。

 「……皆川さん!」

 声が届いた瞬間、彼の足が止まる。

 ゆっくりと振り返った皆川さんの目が、私をとらえる。

 一瞬、時が止まったみたい……その瞳がわずかに見開かれた。

 風が桜の花びらを舞わせる中、彼は私の全身を確かめるように視線を上下させた。

 制服じゃない私、十八歳の私。

 そして、ふっと息を吐くと、目尻がやわらかく下がる。

 肩の力を抜いたような、あの頃よりも少し大人びた優しい笑み。

 懐かしすぎて、それだけで泣きそう。

 「ね? もう中学生じゃないでしょ」

 少し胸を張って、ちょっとドヤ顔でそう言うと、皆川さんは短く笑い、

 「……そうだな」

 低く優しい声で返してくれた。

 舞い散る桜の花びらの中、私は彼に歩み寄る。

 ほんの数歩の距離なのに、何年もかけて近づいたような感覚。

 「……お帰り」

 その言葉は、春の空気よりもずっとあたたかかった。

 「ただいま」

 私は笑って答えた。



 桜吹雪の下、再び始まる物語の予感がする。

 私は自分の居場所に帰ってきた。