異変に気づいたのは、翌日の体育の授業が終わって教室に戻った時。



(ない……)



私の机の引き出しに入れておいた、次の授業で使う日本史の教科書が消えていた。



(家に忘れたっけ?)



いや、でも今朝登校して、通学鞄から教科書類を出した覚えがある。

その時、日本史の教科書を一番上に置いていて、教科書の表紙も見た。



(……どうしよう、次の授業で使うのに)



誰かに借りる?

って、誰に?



こんな時は友達がいない自分を、ほんの少し恨んでしまう。



仕方がないから、教科書なしで授業を受けることにした。






昼休みが終わって、教室に設置されているゴミ箱の前を通った時、私の目に見覚えのある表紙が飛び込んできた。



(日本史の教科書)



心臓がドギマギした。

拾い上げて、裏表紙を見る。



《二年六組 新堂 玲奈》



私の名前が、私の文字で書かれている。



(私の教科書……、なんで……?)