指先の背伸びは恋心を秘めて

谷原先輩は慌てた様子で、
「困ってるんだよ」
と、私を追いかけて来た。



「私に関係のないことなので」

「でも、もう関係あるよ」

「ないです」

「あるよ。少なくともあの子の中では、きみはオレの彼女なんだから」



ピタッと足が止まってしまった。

先輩をじっと見る。

先輩も私から目を離さない。



「自分でどうにかしてください。とにかく、私は帰ります」



また冷たいって思われる。

でも、いい。

誰かを傷つけるくらいなら、冷たく思われたって平気。



「知ってるよ。新堂 玲奈さんだよね? 去年、図書委員会で一緒になったこともある」

「……」



急に氏名を言い当てられて、頭の中で警告音が鳴る。



「マジでお願い出来ないかな? 本当に困ってるんだ。あの子のことを傷つけてしまうけれど、このままじゃオレだってつらい」



(あの子が傷つくってことはわかってるんだ)



「オレのわがまま、聞いてくれない?」