指先の背伸びは恋心を秘めて

「ねぇ、ぎゅってしよ?」



周くんが私を抱きしめる。

好きな人から抱きしめられるって、まるで足元が溶けていくみたいに、心がとろけるんだと思った。



ドキドキし過ぎて力が入りにくい両腕を、周くんの背中にまわす。

心を込めて、ぎゅっと抱きしめた。




「好きだよ、玲奈ちゃん」



周くんの低くて甘い声が、ほんの少し湿っていた。






それから。

六時間目の授業はちゃんと受けて、さらに放課後になり、帰り支度をしていると、廊下がざわざわしていた。



「?」



廊下のほうに様子を見るために、私は教室のドアから顔を出した。

そのタイミングで、誰かとぶつかりそうになった。



「ごめんなさい」
と謝ると、頭を撫でられた。



「ぶつかったところ、痛くなかった? ごめんね」

「周くん!!」

「一緒に帰ろう?」



胸の奥がきゅんと鳴る。

鞄を持って、周くんと廊下を歩く。

みんなが私達を見て、噂している。



(……本当に、恋人になれたんだ)