指先の背伸びは恋心を秘めて

「好き?」

「うん、好き」

「周くんが? 私のことを?」

「うん、好き」



周くんがくしゃっと笑った。

その顔、ずるい。



頬がみるみる内に熱くなってくる。



(多分今、私の顔、ゆでダコ状態だ)




そう思うと恥ずかしくて、両手で顔を覆った。



その時、ふわっと、包まれたような感覚になる。

鼻をかすめる、柔軟剤の良い匂い。



「ごめん、ぎゅっとしたくなった」
と、周くんが私の耳元で甘く囁いた。



(えっ、えっ!?)



今、私って、抱きしめられているの!?



そっと顔から両手を離そうとする。

その気配を察したのか、周くんがほんの少し離れた。

スペースがあいて、両手を離す。



「ぎゅってしてよ」
と、周くんが言う。



「私……、周くんの恋人になってもいいんですか?」



周くんはニコニコして、
「オレもなりたい。玲奈ちゃんの彼氏」
と、私の頬に小さくキスをした。



その瞬間。

火が灯ったみたいに、目の前が明るくなった。

パァッと視界が開けて、世界が広くなる。