指先の背伸びは恋心を秘めて

「えっ、ちょ、ちょっと待って」
と、周くんが口を開く。



「オレの好きな人って……」

「昨日言ってたよね? 好きな人がいるって」

「いや、言ったよ? 言ったけど、そっか、伝わってないか……」

「?」



周くんが俯いた。

とうとう面倒くさく思われているんじゃないかと、ヒヤヒヤする。



「伝わってると思ってたから……」

「周くん?」



俯いている周くんの頭を見る。

少し見える耳が、なんとなく赤くなっている気がした。



「大丈夫?」と聞こうとしたその時、周くんが勢いよく顔をあげた。



「迷惑なんかじゃない」
と、私を見る。






「好きな人って、玲奈ちゃんのことだよ」






「……」

「……あれ? 無反応?」

「……え」

「まさか『え』って言われると思ってなかった」



周くんが苦笑いしている。



(ちょっと待って)



好き?

周くんが、私を?



頭の中の情報処理が追いつかない。

脳内コンピューターが上手く作動していない。