指先の背伸びは恋心を秘めて

校舎を出て、昇降口へ向かうのに近道になる裏庭を通る。

秋というには暑すぎる気候だけど、裏庭に植っている植物達は、もうすっかり秋の顔だった。



「……だから、付き合えないよ。ごめんね」



男子の声が聞こえる。

ちょっとだけ低い、甘い声。

裏庭の奥に、男女の姿を見つけた。



「どうしても先輩の彼女になりたいんです」



(あ……、これって告白してるんだ)



邪魔しちゃ悪い。

引き返そうとしたら、足元で小枝がパキンと折れた。



「あっ」



二人ともこちらを振り返った。



(まずい)



女子は私を見つけるなり、怒ったように眉根を寄せた。

男子はまじまじと私を見ている。



(ん?)



よく見ると、男子の顔に見覚えがあった。

背が高くて、整った顔。

穏やかな雰囲気をまとった彼は、間違いなく噂の「完璧な王子様」。

谷原 周先輩だった。