指先の背伸びは恋心を秘めて

偽彼女、楽しかったな。

例え偽カレカノでも、周くんの彼女になれて嬉しかったな。



そう考えると、じんわりと目頭が熱くなってきた。



(何を泣くことがあるのよ)



念願だった放課後の制服デートも叶ったじゃん。

ずっと欲しかった、誰かに恋する気持ち。



(初めての恋が、周くんで良かった)



今まで知らなかった。

こんなに愛おしい気持ち。



(周くんに教えてもらったんだよ)



ドキドキして、あたたかくなる気持ちも。

胸が苦しくなるくらい、切ない気持ちも。



好きな人の笑顔を、ほんのひとときでも間近で見られた大切な時間だったな。



(だけど、周くんには他に好きな人がいるんだよね?)



私じゃない誰かと、あんなふうに恋をしていくんだよね?

「可愛い」も「好き」も、私じゃない誰かにあげちゃうんだよね?

笑顔も、照れた顔も、しょんぼりした背中も。






さぁっと風が吹いた。

隣にいる周くんが、ものすごく遠く感じる。