指先の背伸びは恋心を秘めて

「なんでその人のところへ行くの? なんで私じゃないの?」



周くんは岸村さんを見て、
「玲奈ちゃんに嫌がらせするのは、もうやめてほしい」
と、言った。



「オレに対して嫌がらせするのもつらかったけれど、玲奈ちゃんにそんなことをするなんて許せない」

「先輩……、そんな、私、嫌がらせなんて」

「嫌がらせだよ」



岸村さんの目から涙がこぼれる。



「岸村さん、きみとは付き合わない。オレはきみのことを好きになれない」



周くんのはっきりした物言いに、岸村さんはその場にうずくまって泣いた。



「行こう」
と、周くんが私に言う。



「でも」

「もう関わらないほうがいいよ」



周くんが岸村さんのそばを通り過ぎて、歩き出した。

私も後に続く。

後ろから見ていてわかる。

周くんが傷ついていること。

背中がしょんぼりして見えて、きっと岸村さんにこれ以上関わらないことが、周くんの優しさでもあるんだと思った。