指先の背伸びは恋心を秘めて

なんのことだと問いかけようとして、わかった。

周くんとのことだ……。



「付き合っているとか言って、嘘ばっかり」



岸村さんは笑顔を引っ込めて、眉間にシワを寄せている。



どうしよう。

本当のことを言う?

でも、そうしたら周くんのことを守れなくなっちゃう。



「何とか言いなよ! あんた、本当は彼女でもなんでもないんでしょう!?」

「……」

「黙っているってことは、やっぱり嘘だったんだ!先輩に急に彼女なんて、違和感を感じてカマかけたけど、最悪!」

「……」

「私のほうがずっと先輩のことを想ってる!! ずっとお似合いなの!! あんたなんか引っ込んでてよ!!」

「……」



岸村さんは、何も言わない私に更に腹を立てた様子で、私の肩を思いっきり押した。

いきなりのことだったので避けきれず、裏庭に尻餅をついた。



「……何とか言えよ!!」

「……周くんにつきまとうのは、やめて」

「は?」

「周くんにつきまとったり、物をとったり、しつこくしたりしてるんでしょう? そういうの全部、周くんにとっては苦しいことなの」