指先の背伸びは恋心を秘めて

「委員会のあと、図書室の大掃除があったの、玲奈ちゃんは覚えている?」



問われて、頷く。



「あの時、ほとんどの委員が掃除しないで帰ったでしょう? オレと玲奈ちゃんと、あと数人が残って掃除したんだ」

「はい。そうでした」

「みんな愚痴を言いながら、嫌々掃除してる中さ、玲奈ちゃんは黙々と掃除してたんだ。オレ、あれ見て感動したもん」

「感動、ですか?」



周くんは大きく頷いて、
「きちんと取り組んで、偉いなぁって」
と、笑った。



「……話す相手がいなかったからですよ」



ぶっきらぼうに答えたけれど、照れ隠しだった。



(周くんだって、丁寧に掃除していた)
と言おうと思ったけれど、照れ過ぎて言えなかった。



「オレのことも一生懸命、守ろうとしてくれててさ。責任感が強くて、何より優しい人だよ、玲奈ちゃんは」

「……」

「あと、笑うと可愛い!」

「か、かわっ……!?」



周くんはあははっと笑って、「可愛いよ」と、もう一度言った。