指先の背伸びは恋心を秘めて

(私の笑顔……、関係なかった)
と少し残念に思ったけれど、男の子が楽しそうに笑っているので、まぁいいかと思った。



メニューを受け取り、店を出る。

「表のベンチで飲もう」と、周くんが言った。



「周くんも変な顔とかするんですね」

「えっ、するよ! めちゃする!」



そう言って、飲み物片手に、また私に向けて顔をくちゃくちゃにしている。

私が笑うと、周くんも笑った。



その笑顔を見て、思った。

みんなが噂する『完璧な王子様』というより、周くんは『お茶目で楽しい人』って感じがする。



(噂やイメージだけでは、その人の“本当”を知ったことにはならないんだな……)



「玲奈ちゃん?」

「あ、いえ。ちょっと考えていて……」

「ん?」

「私、よく言われるんです。『冷たい人』って」



どうしてこんな話……って頭のどこかで思ったけれど、周くんに聞いてほしくて、私は話し始めた。