指先の背伸びは恋心を秘めて

「ごめんね、玲奈ちゃん」
と、周くんが校門を出たところで頭を下げた。



どういうことなのかわからなくて返事に困っていると、
「オレ、玲奈ちゃんに守ってもらってて……情けないよね」
と、しょんぼりしている。



「全然、大丈夫です」

「……優しいんだね」

「え」

「『え』って言われるとは思ってなかった」



周くんがくすくす笑っている。



(優しい? そんなこと初めて言われた)



「玲奈ちゃんは優しいよ」

「……」

「そうだ、ねぇ、どこに行きたい?」

「えっ?」

「デート。行こうよ」



慌てて、岸村さんから守るためについた嘘であることを説明すると、
「うん。でもさ、本当に行かない? オレ、玲奈ちゃんとデートしたい」
と、にっこり微笑まれた。



(初めてのデートだ)



それも憧れの放課後の制服デート。

心なしか、胸の奥がときめく。



周くんと並んで歩いて、学校から一番近い、隣の駅前にある大型商業施設に来た。

道中、すれ違う女の子達が周くんにときめいていることに気づいて、私が隣にいて良いのかと、何度も思った。