指先の背伸びは恋心を秘めて

周くんが困っている。

なんとかして助けなくちゃ。



でも何て言う?

どうやって岸村さんから守ろう?



(偽彼女として、この場を打開出来るようなひと言って何だろう?)



「でっ、ででっ」



思いついた言葉が、十七年生きてきて一度も口にしたことのない単語なので、噛んでしまった。



「何ですか?」
と、岸村さんが私を密かに睨む。



「デートするので!! あの、もう、お引き取りくださいっ」

「えっ……、デート?」



岸村さんが周くんを見て、
「ずるいっ! 私もデートしたいですっ!」
と、腕を掴む。



「か、彼女は私なので」



そう言って鞄を持ち直し、
「周くん、早く行こう」
と、声をかけた。



「『周くん』!? ずるいっ!! 名前呼びは私だってしたいのに!!」



顔を赤くして怒り出しそうな岸村さんに、
「彼女との約束が大事だから、ごめんね」
と、周くんも鞄を持ち直し、私と歩き出す。



岸村さんは不満そうだったけれど、ついては来なかった。