「谷原先輩」

「仮にも付き合ってるんだから、名前で呼んでよ。バレないように」

「……そんなことでバレないと思いますけど」



あ、しまった。

また冷たい言い方だったのかな。



数日経った、放課後の中庭。

私達は二人で会うようになっていた。



「あはっ、それもそうだけど」
と、意外にも笑ってもらえてホッとした。



「オレが名前で呼んでほしいだけだよ」



……ドキッ。



(ん? ドキッ?)



「……あ、周……くん?」

「はい、玲奈ちゃん」



周くんはニコニコしている。

そんな整った笑顔を私に向けないで。



(まぶしいんだもん)



『王子様』の三文字を背負っている人の笑顔は、破壊力が抜群だ。

偽彼女でさえ、そのまぶしさに多少のときめきを感じてしまう。



「……周くん、言いたいことがあるんです」

「何?」