ヨトゥンが槍を振り下ろす。ツヤは表情を変えることなく避ける。イヅナは、まるで戯曲を見ているかのような気分になった。ツヤの顔に笑みが浮かび上がる。

「おいデカブツ。お前の攻撃、ちっとも当たらないぞ。目が見えていないのか?」

ヨトゥンの咆哮が森に響く。明らかに怒っていた。ヨトゥンが地面を蹴る。そのスピードは、先ほどとは比にならないほど早くなっていた。

「ツヤさん!」

イヅナが叫んだその時だった。突然辺りが暗くなる。まるで、太陽が世界から一瞬で消えてしまったかのようだった。

「暗くなったぞ!何でだ!?」

「急に暗くなった?」

イヅナやレオナードだけでなく、ヴィンセントも驚いた様子だった。ヨトゥンと戦っているツヤも、突然辺りが暗くなったことに戸惑っている様子である。

(な、何?)

太陽が雲に隠れた時よりも辺りは暗い。しかし、ヨトゥン以外にこの場所に妖がいるわけではなさそうだ。イヅナは辺りを見回す。そして、異変を見つけた。

「ねぇ、あれって何かしら?」