「随分と古そうね」

「うん。何百年も前のものだろうね。何の建物かはわからないけど、石が崩れるかもしれないから、あまり近付かない方がいいかも」

イヅナの呟きにヴィンセントが答える。しかし、レオナードはヴィンセントの言葉など聞こえていなかったようで、ゆっくりと建物に近付いていく。刹那、イヅナのアレス騎士団団員としての本能が危険だと叫んだ。

「レオナード、待って!」

イヅナは地面を蹴って走る。ヴィンセントもレオナードを止めるために走った。レオナードはゆっくりと建物に近付く。建物が氷に覆われていく。

「グアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

大きな咆哮と共に、建物の中から巨大な生物が姿を現す。白髪に毛深い青白い体、その手には大きな槍を持っている。

「霧の巨人、ヨトゥンだ!」

ヴィンセントの顔がサッと青白くなる。イヅナの体が震えた。武器を持った巨人と丸腰の子どもでは、どちらが勝つかなど目に見えている。

「でけぇ……」

レオナードもその場から動けない様子だった。万事休す。ヨトゥンが槍を振り上げた。