あやかしと魔王の側近

「ダメだよ。ルーチェ、戻ってきて」

その人物は何かを唱え始めた。すると、ルーチェの体が半透明からゆっくりと戻っていく。イヅナはルーチェに手を伸ばす。触れることができた。

「あなたは……」

全員の目が男性に向けられる。男性はイヅナたちの顔を見回した後、口を開いた。

「僕はクラル。クラル・ディスペア。ルーチェを迎えに来た」



殴り付けられた頭と打ち付けた体が痛む。ルーチェはゆっくりと目を開けた。そして、目の前に広がっている光景に「えっ……」と思わず呟く。

暴れ回るモンスターはどこにもいない。イヅナたちもいない。ただ真っ白な世界だけが広がっている。

「ここは……」

ルーチェが一歩を踏み出した時だった。最後に人の気配を感じ、振り返る。黒いフードを深く被った人物がそこにはいた。

「あなたは誰ですか？ここはどこ？」

ルーチェの杖を握る手に力が入る。その人物の顔ははっきりと見えない。しかし、おかしそうに笑っていることだけはわかった。