あやかしと魔王の側近

ギルベルトがダイニングテーブルに敷かれたテーブルクロスを外す。

「これを担架代わりにしよう。頭を打っているなら無理をさせない方がいい」

「俺も一緒に運びます!」

レオナードが手を挙げる。床にテーブルクロスを敷き、ルーチェをその上に乗せようとしたその時だった。

「えっ……」

全員の動きが止まる。ルーチェの体が透明になり始めているのだ。

「ルーチェくん、元の世界へ……?」

ヴィンセントはそう呟いたものの、イヅナの胸は緊張に満ちている。違う。そう直感で感じた。

「どんどん消えていってる!どうしたらいいんだよ!」

レオナードがルーチェの手を掴もうとする。しかし、その手に触れることはできなかった。レオナードの手は宙を掠っただけだ。

「ルーチェ!」

誰も何もできない。イヅナの瞳に涙が浮かぶ。ルーチェの体はゆっくりと消え続けている。しかし、半透明になるその手を掴んだ人物がいた。

全員顔を上げてその人物を見る。青みがかった黒髪の男性がルーチェの手に触れていた。その目は、優しくも怒りを含んでいる。