「レオナード、よくこんな不気味なところを探検できたわね」

「そりゃあ、アレス騎士団の任務で色んなところへ行ってるからな!」

体をさするイヅナに、レオナードは得意げに笑う。レオナードのいいところは勇敢なところだ。イヅナは息を吐く。今の季節は冬ではないのだが、何故か吐く息が白い。

(どうしてこんなに寒いの?)

すると、イヅナの体にふわりとジャケットがかけられた。ヴィンセントのものだ。イヅナがヴィンセントを見ると、彼は優しく微笑んでいた。

「イヅナ。寒いから羽織っていて」

「ありがとう」

ジャケットを羽織ると寒さが少し和らいだ気がする。しかし、寒いことに変わりはない。イヅナが辺りを見回すと、木々の根元が凍っているのが見えた。

「ヴィンセント、この森おかしくない?」

「……うん。この寒さは異常だ。妖の仕業かもしれない」

ヴィンセントがイヅナを守るように彼女の前に立つ。そして、鼻歌混じりに歩くレオナードの服の襟首を掴んだ。

「グエッ!ヴィンセント、何すんだよ……」

「もう少し周りを見なよ。おかしいと思わない?」