「乱暴なことをしてごめんね。どうしてもルーチェをこの世界に連れ戻さなくちゃいけないんだ。……さて、教えてくれるんだよね?」

「は、はい……」

ユーゴは体を震わせながら起き上がり、クラルの前へと座る。そしてクレイス・クロックのこと、もう一人の男のこと、異世界へ行く方法など、クラルが聞きたかった全てを話した。



牢獄を出たクラルの顔に表情はなかった。しかし、彼の拳は強く握り締められており、無表情の仮面の下に激しい感情があることが窺える。

『クラル様。情報は掴めましたか?』

八咫烏が話しかけてくる。クラルが大きく頷くと、八咫烏はまた体を大きくさせた。クラルは八咫烏に掴まる。

『屋敷まで戻りましょうか?』

「ううん。大丈夫。それよりも行ってほしい場所があるんだ」

クラルが行き先を告げると、八咫烏は漆黒の羽を広げて空へと舞い上がる。風を全身で受け止めながら、クラルは心の中で呟く。

(ルーチェ、今迎えに行くからね)