(あの時、ルーチェが前に出るのを止めていたら……)

後悔だけが胸に押し寄せてくる。ルーチェは今どこにいるのだろうか。酷い目に遭っていないだろうか。クラルの中で、不安と緊張も芽を出していく。

『クラル様、到着しました』

八咫烏の声で、クラルはもう八咫烏が空を飛んでおらず、地上に降りたことに気付いた。どれほど時間が経ったのだろうか。クラルの前には、囚人を収容している牢獄がある。

「八咫烏、ありがとう」

クラルはお礼を言い、牢獄へと近付いていく。門番に不審がられたものの、自身の名前と事情を説明すると中に通された。

牢獄は薄暗い。クラルは面会室へと通された。椅子に座って待っていると、職員が囚人を連れてくる。クレイス・クロックを持っていた人物は、クラルとそれほど歳の変わらない男だった。

「初めまして。僕はクラル・ディスペア。君の名前は?」

クラルは笑みを浮かべ、男に訊ねる。男は気怠そうに「ユーゴ・マッケンジー」とだけ言った。クラルは感情を抑えながら訊ねる。