一方、クラルはルーチェがクレイス・クロックによって異世界へ飛ばされてしまった後、クロードとノアの制止も聞かずに部屋を飛び出した。廊下を走り、屋敷の門を抜ける。ただ、走り続けた。

『クラル様、そんなに慌ててどうされましたか?』

クラルを追ってきたらしい八咫烏が空を飛びながら訊ねる。クラルは足を止めた。心臓が痛い。クラルの肩が大きく上下に動いた。

「……ルーチェが、ルーチェが、異世界に飛ばされたんだ。クレイス・クロックを持っていたもう一人に会いたい」

クラルの言葉に八咫烏は大きく息を吐いた。刹那、八咫烏の体が巨大化する。

『クラル様、私の背中に乗ってください。その者のところへお連れします』

「……ありがとう」

八咫烏の背中にクラルは乗る。八咫烏は『しっかり掴まっていてください』と言い、漆黒の羽を羽ばたかせる。クラルの髪が風で揺れる。クラルは八咫烏に掴まりながら、ルーチェのことばかり考えていた。