装置に完全に吸い込まれる直前、ルーチェは最後の抵抗と言わんばかりにクラルたちの方を振り返った。クラルは絶望した表情を、クロードは悔しげな表情を、ノアは驚いた表情を浮かべていた。

(僕、ここに帰って来られるのかな?)

ルーチェの意識はそこで途切れた。そして目を覚ました時、全く見知らぬ屋敷のベッドに寝かされていたのである。



ルーチェは話し終えると口を閉ざす。心の中は緊張で満ちていた。ドクドクと心臓の鼓動が早い。

(こんな話、信じてくれるかな……)

不安を覚えたルーチェだったが、それは杞憂に終わる。レオナードが近付いてきたと思った刹那、「お前すげぇな!!」と笑顔で言われたからだ。

「す、すごい?」

呆気に取られるルーチェの前で、レオナードはニコニコ笑いながら続ける。

「異世界で暮らしてて、魔王の側近で、異世界転送装置とか、すげぇよ!!」

「そ、そうかな?」

あっさり信じてもらえたことにルーチェは内心戸惑っていた。疑われ、尋問されるだろうと覚悟をしていたため、肩の力が一気に抜けていくのがわかる。