ルーチェが疑問に思っていると、ノアが「あなた。顔が怖いわよ。ちゃんと二人に説明してあげて」と言った。クロードは「すまん」と咳払いをし、ルーチェとクラルを見つめる。

「最近、この辺りで不審者の目撃情報があってな。俺が見張っていたところ、怪しげな二人組を見つけた。残念ながら一人には逃げられてしまったがな。捕らえた奴が持っていたのがこの装置だ」

クロードが装置を指差す。ルーチェが訊ねる。

「父様。この装置は一体何？どうやって使うの？」

「俺もにわかには信じられないが、不審者曰くこの装置は異世界転送ができるそうだ。名前は確か、クレイス・クロック」

「異世界！？」

ルーチェの脳裏に前世の記憶が蘇る。前に生きていた世界では、異世界転生という言葉はフィクションでよく使われていた。それをテーマにした漫画やアニメが人気だったことを思い出す。

「異世界転送って、そんなこと可能なの？」

クラルは戸惑っている様子だ。クロードは首を傾げながら装置を手に取る。