「この機械みたいなの、この世界には存在しないんだよね」

ギルベルトがそう言った時だった。男の子の目がぴくりと動く。イヅナは男の子に駆け寄った。男の子の目がゆっくりと開く。アメジストを思わせる紫の目が、イヅナとギルベルトを見つめる。

「君、大丈夫？」

「こんにちは。体は痛くない？」

ギルベルトとイヅナは男の子に声をかける。ぼんやりとした顔だった男の子は、ギルベルトの手にある懐中時計のような機械を見てサッと顔色を変えた。戸惑いが浮かんでいる。

「どうして、あなたがクレイス・クロックを？それにここはどこですか？」

「この機械が何かを知っているんだね」

ギルベルトの目の色が変わった。



男の子が目を覚ましてから数分後、部屋にはイヅナとギルベルトだけでなく、ツヤとレオナード、そしてヴィンセントが集まっていた。全員が男の子を見ている。部屋の空気はどこか緊張に満ちている。

「あの、とりあえず自己紹介しませんか？私はイヅナ・クリアウォーター。よろしくね」