いよいよ明日がライブの日。私は花蓮ちゃんのことがずっと気になってる。だってすごく辛そうだったのに怒らせちゃったもん。明日も花蓮ちゃんはきっと来ない。そんなこと考えたら土曜日も全然楽しくない。
「檸檬ー今部屋入っていい?」
心愛だ。なんの話だろう。
「いいよー好きに入って」
とたん、ガチャッとドアが開いて寂しそうな、怒ってるような顔の心愛が入ってきた。
「話は二つだよ。檸檬が顔を背けてるもの。一緒にやりたかったけどたまには姉の私を頼っ てもいいんだから。」
な、なんなの。私が顔を背けてるものって。姉を頼るってどういうこと。
「1つ目。藍ちゃん達との約束覚えてる?ちゃんとSNSでアピール動画出してる?」
あ。嘘、私がこんなにアイドルとして初歩的なことを忘れるなんて。花蓮ちゃんのせいなの。それとも、なんなの。
そして黙ってる私をいいことに心愛はまた口を開いた。
「花蓮ちゃんのあれ言い過ぎ。あそこは悩みを聞くべきでしょ。」
そんなんじゃないって言いたいのに。
「ちがうっ。忘れてたんじゃなくて。花蓮ちゃんを傷つけたいんじゃなくて」
うまく言葉が出なかった。
「はいはい。言い訳はいらないですよー。てか私の言ってることが違うならなんなの。」
心愛の声は冷たかった。でも不思議とどうにも思えなかった。前までは心愛が冷たいと怯えて機嫌をとっていたのに。
「私達は双子なのが売りなの。そっくりなのが売りなの。だから.」
うそっ。心愛は私達のいい所は双子でそっくりなだけだと思ってたの。ダンスとか歌とか他にもいっぱいあるのに、その中でそっくりなのが個性がなくて一緒にしなければいけない「双子」という枠だけだと思ってたの。ひどい、ひどい。私は心愛とそっくりで仲良しなのを見せびらかすためにアイドルになったんじゃないのに。
「今からアピールもとるよ。お姉さんぶらないでくれる?」
つい、自分とは思えない冷ややかな声が出た。
「別にお姉さんぶってないし。」
「もうっ。動画撮りたいからさっさと出てって。」
あーあ。今週は花蓮ちゃんを傷つけた上に心愛とも喧嘩して本当に最悪。



