ついに、ステージの日まで残り1週間。今日はスタジオで心愛と二人で自主練する。衣装は出来てるし、髪型とかメイクもバッチリ決まっている。でも中々もうすぐステージだという実感が沸かない。
スタジオの帰り。
「あの、助けてください。辛いんです、逃げ場が無いんです。」
急に小5ぐらいの女子に話しかけられた。
「あたしは長岡花蓮って言います。お母さんはバイトの掛け持ちで他の人も私のこと見てく れなくて。道でずっと行き当たりばったりに誰かに声を掛けてました。身体も心も変化し たのに昔やったからっていう理由でずっと妹の有菜と弟の憲の面倒を見なくちゃいけなく て。学校ではキモイとか言われた。なんで全部苦しむのはあたしなの。有菜と憲も甘やか されてばっかいないで苦しんでよ。」
花蓮ちゃんはそう言った。でももうかなり遅い。それでも親が心配しないって言う事は児童虐待かお母さんの手が一杯なのかな。
「大変だね」「大丈夫じゃないでしょ」「みんなはひどいよ」
どの言葉も花蓮ちゃんにとっては軽薄で裏切りが見えているものだと思う。
「あの、私はアイドルで・・・」
そう言ってライブに来てもらおうとした。元気になってくれると思うから。
「ライブなんて幸せで満ち足りてる人がするもんでしょ。アイドル?そんなことしてないで 苦しんでる人を助けてよ。ばっかみたい」
え。違うよ。ライブは辛い人が元気をもらうためのものだよ。そう言いたいのに喉に言葉がひっかかった。
「気ぃ向いてからでいいからライブよかったら来て!」
そう言って私はライブの無料券を花蓮ちゃんに渡した。



