あなたの家族になりたい

 翌週、昼飯の後で澪に呼び止められた。

「瑞希さん、今日の午後ってお時間ありますか?」

「あるよ、今日は午後休みだから」

「あの、指輪のお話してもいいですか?」

「わかった、お前の部屋行くわ」

 澪と一緒に部屋の座布団に並んで座る。
 見せられたタブレットには結婚指輪が並んでいた。

「このあたり、どうでしょうか。あまり派手ではなくて、いいかなって」

「いいけど、こういう石がいっぱいついたやつじゃなくていいんだ?」

「そういうのだと水仕事のときは外さないと石が取れちゃうことがあるみたいで」

「あー、そりゃ面倒くせえな。……じゃあ、石がいっぱいついた婚約指輪買うか。出かけるときとかに着ければいい」

 タブレットをスクロールしながら、結婚指輪と重ねづけできるものを探す。

 俺としてはどっちでもいい。でもたぶん、こいつは自分から欲しいとは言わないし、どこかに『婚約指輪は男性からの誠意』と書いてあったし。
 ……前に藤乃に「そんなに好かれてるって思えるほど、お前は美園さんのこと大事にしてた?」と聞かれたのを、俺はまだ気にしている。

「あ、これ、どうだ?」

 派手すぎず、重ねづけしてもごちゃごちゃせず、でもちゃんと「俺のものだ」とわかるやつ。ついでに澪の気が引けないように、そんなに高くないもの。

「……素敵だと思います。あの、これを私がつけて、似合うと思いますか?」

「思う」

 澪は「……そうですか……」とやけに嬉しそうに頷いた。
 時計を見ると、まだ昼過ぎだ。

「指輪、今から見に行くか。近いし」

「今からですか?」

「電話して、空いてたらな。お前、午後用事ある?」

「いえ、大丈夫です」

 電話をすると、平日の昼過ぎだから、店も空いていた。リビングで仕事をしていたお袋に声をかけて、家を出る。