あなたの家族になりたい

 なるほど……。
 スマホでデザインや値段を調べていたら澪が風呂から出てきた。

「澪ー、今いい?」

「は、はい! あ、デザート出しますね」

 澪は冷蔵庫からグラスに入ったコーヒーゼリーと、昼間買ったファミリーサイズのバニラアイスを出してきた。

「コーヒーゼリーを混ぜて細かくして、そこにアイスを入れていきます」

「おお……うまそう……」

 二人でコーヒーゼリーにアイスを混ぜる。甘さと苦さでめちゃくちゃ美味え。
 アイスは半分残しておいて、明日アッフォガートにする予定だ。

「あ、そうだ。あのさ、結婚指輪なんだけど」

「……はい」

 神妙な顔で澪が頷いた。

「こういうのがいい、っていうのはある?」

「えっと……あんまり考えたことがなくて……。でも、瑞希さんとお揃いで、いつもつけていられるものがいいです」

「ふうん。じゃあこのあたりか? 婚約指輪いる?」

「それはどっちでも……。あまり使う状況がピンと来ないです」

「そりゃそうだ。藤乃は花音が叔母にいびられてたから、それを牽制するためにってやたらデカいダイヤがついたやつ買ってたけど……これ」

 スマホの写真を見せると澪は「なるほど?」と頷く。

「これ、おいくらくらいするのでしょうか?」

「たしか……これくらい。藤乃が全額出してる」

 藤乃に聞いた値段分だけ指を立てて見せたら、澪の口から小さな悲鳴が漏れた。
 わからんではないけど、出せない額でもない。

「ちなみに藤乃と花音の結婚指輪はこれくらい。こっちは割り勘つってたな」

「なるほど……。えっと……考えさせてください」

「おう。あ、俺はつけるのはいいけど、細めで丈夫なやつがいい。デザインもシンプルで。泥とかが取れないと困るし。それと結婚指輪も婚約指輪も藤乃と花音が選んだやつくらいの値段なら出せるから、それも気にしなくていい」

「はわ……わ、わかりました。ちゃんと考えます」

 澪は空になったグラスを持って台所に去っていった。
 俺も立ち上がって風呂に向かう。途中で思い出して、台所に顔を出した。

「片付け終わったら、俺の部屋に先に行ってろ」

「……わかりました」

 顔を赤くして頷く澪に満足して、今度こそ風呂に向かう。