目が覚めたら全裸だった。
いやいやいや、何でだよ。
起き上がって辺りを見回す。
……自分の部屋だ。
小学生のときから使ってる見慣れた部屋。
「……えっと……?」
たしか、あれだ。昨日、昼過ぎに澪の母親がうちに来て、イラついたから藤乃と飲みに行ったんだ。
で、帰ってきて……。
「あれ、澪は?」
寝るときまで隣にいた澪がいない。
……ちょっと、ショックだった。
そんなに嫌だったかな……。
いや、トイレとかかもだし。
でも待っても澪は戻らない。
昨日飲みに行ってそのまま寝たからシャワー浴びたいし、口の中も気持ち悪い。
諦めて起き上がり、下着だけ着けて階段を降りると、台所から物音がした。
「瑞希さん! おはようございます!」
覗くと、澪が振り向き、今までになく明るい顔で駆け寄ってきた。
「……はよ」
「朝ごはんを用意してました。すぐ出来ますので、もう少しお待ちください」
「う、うん。シャワー浴びてくる」
「はい! ……あ、あの、一個お願いしてもいいですか……?」
澪が口元に手を当てるので屈んで耳を寄せる。
「あの、おはようのキスしてもらっていいですか?」
「……は?」
予想の何倍もかわいいことを言われた。俺の反応に、澪は少ししょげた顔になる。
「だ、ダメですか……」
「ダメっつうか、ヤダ。待て、違う、泣くなよ、そうじゃねえって!」
半泣きの澪の頭を撫でる。
「昨日飲みに行って、歯磨きしないで寝ちまったから、口が臭いんだって」
「……今更では……?」
「そうかもしれねえけどさ! つーか、してほしいなら、俺が起きる前にいなくなるなよ。傷つくだろうが」
澪はポカンとした顔で俺を見上げた。なんなんだよ、もう。
「傷ついたんですか?」
「……ちょっと」
「それは……ごめんなさい。先に目が覚めて……いていいか、わからなくて」
「いいに決まってんだろ、ばか」
「ごめんなさい。次から、気をつけます」
「いいよ。とにかくシャワー浴びて、歯磨いてくるから」
「わかりました。行ってらっしゃい」
やたら嬉しそうな澪の額に軽くキスして風呂場に向かった。
……俺はいつからそんなキザなことをするようになったんだ。たぶん、藤乃に毒されてる。
とにかくさっぱりして風呂を出る。
いつもの倍くらい時間をかけて歯も磨いた。
「……っし」
洗濯を回してからダイニングに向かうと、テーブルに朝飯が並んでいる。
……なんでか、泣けてきた。
いや、なんでだよ。
泣く要素なんかねえだろ。
「瑞希さん、朝ごはんの用意できてますよ」
「……うん、ありがと」
座ろうとしたら、澪がコップを持って寄ってきた。
頼まれてたのを思い出して、腕を掴んで引き寄せる。
何度か唇を合わせて離すと、澪は真っ赤になって目を逸らした。
「おはよ」
「……おはようございます……。な、なんだか、昨晩と違いますね……」
「何が?」
茶をひと口飲むと、澪はうつむいて指をいじっていた。
「その、昨晩は……もっと……」
「お前……、朝からあんなんしねえだろ……。飯どころじゃなくなるだろうが」
「そ、そうなんですか……」
「なに、してほしかった?」
からかうつもりで笑いながら聞くと、澪は俯いたままボソボソ、
「ちょ、ちょっと……」
と答えた。深呼吸して、いろいろ飲み込む。
「……とりあえず、飯」
「は、はいっ。あ、瑞希さん。あの……隣じゃなくて、向かいに座ってもいいですか?」
「いいけど」
澪はニコニコしながら向かいに座った。
なんでそんなに嬉しそうなのかと思ったけど、確かに向かいはいいな。
話しやすいし、顔がよく見える。
「今日の仕事は?」
「今日必須の仕事はないです」
「そっか。俺は水やりくらいだから、一時間そこらで終わる。昨日のビュッフェ、夕方に予約変えといたから、後で行こう」
「はい!」
いやいやいや、何でだよ。
起き上がって辺りを見回す。
……自分の部屋だ。
小学生のときから使ってる見慣れた部屋。
「……えっと……?」
たしか、あれだ。昨日、昼過ぎに澪の母親がうちに来て、イラついたから藤乃と飲みに行ったんだ。
で、帰ってきて……。
「あれ、澪は?」
寝るときまで隣にいた澪がいない。
……ちょっと、ショックだった。
そんなに嫌だったかな……。
いや、トイレとかかもだし。
でも待っても澪は戻らない。
昨日飲みに行ってそのまま寝たからシャワー浴びたいし、口の中も気持ち悪い。
諦めて起き上がり、下着だけ着けて階段を降りると、台所から物音がした。
「瑞希さん! おはようございます!」
覗くと、澪が振り向き、今までになく明るい顔で駆け寄ってきた。
「……はよ」
「朝ごはんを用意してました。すぐ出来ますので、もう少しお待ちください」
「う、うん。シャワー浴びてくる」
「はい! ……あ、あの、一個お願いしてもいいですか……?」
澪が口元に手を当てるので屈んで耳を寄せる。
「あの、おはようのキスしてもらっていいですか?」
「……は?」
予想の何倍もかわいいことを言われた。俺の反応に、澪は少ししょげた顔になる。
「だ、ダメですか……」
「ダメっつうか、ヤダ。待て、違う、泣くなよ、そうじゃねえって!」
半泣きの澪の頭を撫でる。
「昨日飲みに行って、歯磨きしないで寝ちまったから、口が臭いんだって」
「……今更では……?」
「そうかもしれねえけどさ! つーか、してほしいなら、俺が起きる前にいなくなるなよ。傷つくだろうが」
澪はポカンとした顔で俺を見上げた。なんなんだよ、もう。
「傷ついたんですか?」
「……ちょっと」
「それは……ごめんなさい。先に目が覚めて……いていいか、わからなくて」
「いいに決まってんだろ、ばか」
「ごめんなさい。次から、気をつけます」
「いいよ。とにかくシャワー浴びて、歯磨いてくるから」
「わかりました。行ってらっしゃい」
やたら嬉しそうな澪の額に軽くキスして風呂場に向かった。
……俺はいつからそんなキザなことをするようになったんだ。たぶん、藤乃に毒されてる。
とにかくさっぱりして風呂を出る。
いつもの倍くらい時間をかけて歯も磨いた。
「……っし」
洗濯を回してからダイニングに向かうと、テーブルに朝飯が並んでいる。
……なんでか、泣けてきた。
いや、なんでだよ。
泣く要素なんかねえだろ。
「瑞希さん、朝ごはんの用意できてますよ」
「……うん、ありがと」
座ろうとしたら、澪がコップを持って寄ってきた。
頼まれてたのを思い出して、腕を掴んで引き寄せる。
何度か唇を合わせて離すと、澪は真っ赤になって目を逸らした。
「おはよ」
「……おはようございます……。な、なんだか、昨晩と違いますね……」
「何が?」
茶をひと口飲むと、澪はうつむいて指をいじっていた。
「その、昨晩は……もっと……」
「お前……、朝からあんなんしねえだろ……。飯どころじゃなくなるだろうが」
「そ、そうなんですか……」
「なに、してほしかった?」
からかうつもりで笑いながら聞くと、澪は俯いたままボソボソ、
「ちょ、ちょっと……」
と答えた。深呼吸して、いろいろ飲み込む。
「……とりあえず、飯」
「は、はいっ。あ、瑞希さん。あの……隣じゃなくて、向かいに座ってもいいですか?」
「いいけど」
澪はニコニコしながら向かいに座った。
なんでそんなに嬉しそうなのかと思ったけど、確かに向かいはいいな。
話しやすいし、顔がよく見える。
「今日の仕事は?」
「今日必須の仕事はないです」
「そっか。俺は水やりくらいだから、一時間そこらで終わる。昨日のビュッフェ、夕方に予約変えといたから、後で行こう」
「はい!」



