あなたの家族になりたい

「そういうわけで、アイス買わねえといけないから帰る」


 藤乃に運んできた花を渡して、確認している間に、店のサイトでアイスのラインナップを確認する。

 先日発売した人気ゲームとのコラボアイス、気になってたんだ。


「なんていうか、よかったね」

「何が?」


 受領書を差し出す藤乃はニヤッと笑っている。

 なんかいいことがあったか?


「美園さんと上手くやってるみたいで」

「やれてるかな」

「知らないけどさ、瑞希を見る限りでは、上手くやれてるみたいに見える」

「言葉がきつくならないように気をつけてはいるんだけど」


 それが上手くできてるかはわからん。

 でも最近怒られないから、多少マシになったのかもしれない。


「俺は瑞希が幸せにやってくれて、さっさと嫁さん見つけてくれればそれでいいからさ。将来お前の面倒なんか見たくないんですよ、お義兄さん」

「ふざけんな。結婚しなくたって、お前らの世話になる気はねぇよ」


 笑う藤乃を睨んで、裏口から店を出る。

 ……なんていうか、そこまで考えていなかった。

 澪がうちにいるのは、俺と将来的には結婚するため……という建前だ。

 本当は、高圧的な母親から逃がすためだ。

 だから、澪がもし他にいい相手を見つけたり、そうじゃなくても俺と結婚したくなくなったら、出ていくことだってできる。

 ……それは、なんつーか……あんまり面白くねぇな。

 家に帰ったら澪がパタパタ出てくるのとか、飯に「美味い」って言ったら「お口に合ってよかったです」と小さい声ではにかむのとか――そういうのがなくなるのは、考えたくない。


 いつもよりゆっくりアクセルを踏んで駐車場を出た。