あなたの家族になりたい

 晩飯は炊き込みごはんとハンバーグ。付け合わせは粉吹き芋と甘いにんじん。


「うまい……めちゃくちゃうまい……腹減ってたから、とにかくうまい……」


 俺が噛み締めている向かいで、親父とお袋もせっせと食べている。


「美味しいわねえ」

「おかわりくれ」

「はい、お持ちします」


 澪はちょっと嬉しそうにしながら親父の皿にハンバーグを追加している。

 ……よく見たら、全員分のハンバーグの大きさが違う。

 お袋と親父は小さめ二つで、俺のはやたらデカいのが一つ。

 デカいのがドンと乗ってるとテンションが上がる。

 こんなことで嬉しいとか、俺は小学生か……?


「ハンバーグ、得意なんだ?」


 ようやく隣に座った澪に聞くと、困った顔になった。


「いえ……得意なのは、粉吹き芋です」

「そうなん……? 粉吹き芋に得意もなにもあんのか?」

「……お口に合いませんでしたか……?」

「うめえよ。つーか、それ得意なんじゃなくて芋好きなだけだろ?」


 そう言うと、澪の目が丸くなった。

 自分の皿を見て首をかしげる。

 つーか、こいつの粉吹き芋多いな……めちゃくちゃ好きなんじゃん。


「もしかして、自分が芋好きって気づいてなかったか? この間のポテサラもお前の分だけ倍くらい盛ってあったぞ」


 澪の顔が真っ赤になって、目が泳いだ。

 マジで無意識だったのか……。


「……それは……気づきませんでした……恥ずかしいです……」

「別に恥ずかしくはねえだろ」


 芋にハンバーグの肉汁を吸わせる。

 ……めちゃくちゃうめぇ。


「俺の分まで食ったらさすがに恥ずかしいかもだけど、好きなもん山盛り食ったっていいだろ。お前が作ってんだし」

「そうでしょうか……?」

「今度あれ作って。餃子の皮に芋とチーズ巻いてあるやつ」


 子どものころ、お袋が餃子の皮余ったときによく作ってたやつだ。

 首をかしげる澪に、お袋がどんな物だったかを説明している。


「ごちそうさまでした。うまかった。ありがと」

「いえ、お口に合ってよかったです」


 澪はまたちょっと嬉しそうにしていた。

 うちに来たころより、だいぶ笑うようになった。

 辛気くさい顔してるより、ずっといい。