あなたの家族になりたい

 次の日の夕方、玄関の呼び鈴が鳴り、親父の声が聞こえてきた。


「明けましておめでとー! 酒持ってきた!!」

「つまみ用意してあるよ!!」


 自分の部屋を出て一階を覗くと、須藤さんたちだった。

 藤乃と花音もいて、俺に気づくと手を振ってくる。

 親父と須藤さんは、さっさと客間にこもって宴会を始める。

 藤乃の母親は、ダイニングでお袋と飲み始めた。

 俺は澪を連れてリビングに向かう。


「お邪魔してるよ」


 藤乃が酒を持ってきてくれたので、ありがたくローテーブルに並べる。


「おー、久しぶり……でもないか……」

「ねー、結局週一くらいで会うもんね。あ、お兄ちゃんにお菓子持ってきた。あのね、もらいものなんだけど……あ、澪さん!」


 妹の花音は相変わらず騒がしい。
 俺に菓子の箱を押しつけると、台所の澪の方へ行ってしまった。


「どう?」


 藤乃が囁く。


「まあ……なんとか……ぼちぼち……」

「ふうん。よかったね」

「よかったかなあ……」

「瑞希は無理なら、無理って言うだろ」


 ムカつくなー。この“わかってます”みたいな顔が!

 ……そうなんだけどさ。藤乃に隠し事はできない。


「あの、おつまみとお茶菓子です……」

「サンキュ。澪、挨拶」

「あ、はい。えっと、はじめまして。美園澪です。由紀さんのお家でお世話になっております」


 澪が頭を下げると、花音が俺を睨んだ。


「瑞希、なんでそんなに偉そうなの? よくないよ、よそのお嬢さんに」

「そんなつもりは」

「つもりとか関係ないから。――はじめまして、澪さん。そこの愚兄の妹、花音です。ふつつかな兄ですが、よろしくお願いします」

「ふつつかだなんてそんな……私にはもったいない方です……」


 お前、そんなこと思ってたの?

 言われたことないけど……?

 思わず澪を見たら、花音の後ろで藤乃が吹き出していた。


「はじめまして、須藤藤乃です。花音さんの夫で、瑞希とは幼馴染みです。よろしく」

「は、はい……!」


 澪はまたぺこぺこしている。

 ……なんつーか、藤乃には怯えないんだな。
 
 まあ、藤乃は目つきは悪いけど態度が穏やかだし、言葉もきつくない。

 初対面の時の俺とは大違いだ。
 
 花音が澪にあれこれ話しかけながら、ソファに腰を下ろす。