十六夜月のラブレター

「君の言葉って『元気だそう!』って無理に押し付けてくるんじゃなくて。『元気になれるよ』って自分で立ち上がれるまでそっと背中を支え続けてくれるようなかんじで。俺、本当に救われてた」

ああ、誰にも必要とされていないと思っていたのに……涙が溢れて止まらなくなる。

「だから、君が紹介する今月の図書は全部読んでたんだ。本を通して君を感じれたから」

「うれしい」って言いたいのに、喉が締め付けられて痛くて言葉がすべて嗚咽になってしまう。

「そんなに泣かないで。かわいすぎて俺、堪らなくなる」

次の瞬間、入谷さんの腕の中にいた。

「俺、ずっとあの公園で言えなくて後悔してることがあった。でも今は、言わなくてよかったと思ってる。この言葉は君に伝えたかったから」

入谷さんが私を抱く腕を緩めた。見上げるとすぐ近くに入谷さんの顔がある。

「好きだ」

「……私も、好き……」

こんなにも素直に言えたのは、雪見が強がっちゃいけないって言ってくれたから。

「俺、こんな日がくるなんて思ってなかった。もう諦めてたから」

「私も、こんなに想ってくれてる人がいたなんて、知らなかった」

「きっと月見ちゃんはさ、俺にとって満月じゃなくて十六夜月だったんだ」

「え?」

「ずっと待ってるのに全然出てきてくれなくて。もう諦めて帰ろうとしたらやっと出てきてくれた、十六夜月」

「でも、大阪に戻っちゃうんじゃ?」

「戻るのはやめる。今まで一緒にいれなかった分、これからはずっと一緒にいよ」

「うん」

吸い込まれるように入谷さんの瞳を見つめる。

入谷さんは包み込むように微笑んでくれたあと、そっとやさしいキスをくれた。

それはやっと出会えた私達の、はじめてではじまりのキスだった。

(了)