十六夜月のラブレター

「私、何も知らなくて。ごめんなさい」

「いや。でもまさか、最後の望みをかけた手紙も君に届いてなかったとは……」

「悪いのは私。私が雪見を拒絶してたから……」

「俺がもっと雪見ちゃんの気持ちを考えるべきだった。告白されてたんだから。でも君からの返事が来なかったのはマジで凹んだよ。あんなに勇気出したのに俺のことなんてどうでもいいんだなって」

「それならどうして東京支店へ?」

「社内報を見て君だとすぐにわかった。たとえ眼鏡をかけてなくてもあの川柳がとても君らしかったから。だから懐かしくなって。君の気持ちを確かめたくなって。吹っ切るためにも。そしたら君は俺のこと憶えてすらいなくて。さらに落ち込んだっていう」

入谷さんは笑って言ってくれたけど、私は笑えなかった。すべてが悔やまれて仕方なかった。

「私、公園で入谷さんと会っていたかった。そしたらもっと、楽しかったはず。幸せだったはず。でももう、失った時間は戻ってこない……」

落ち込んでいる私に入谷さんがひとつの段ボール箱を持ってきた。あの「メモリー」と書かれている秘密の箱だ。

「開けてみて。あはは、そんなに怯えなくても大丈夫だよ。変なものは出て来ないから」

恐る恐る箱の蓋を開ける。中に入っていたのは何枚もの私が書いていた図書室便りだった。

「さっき言った図書委員の奴に頼んで毎月掲示板から外されたら貰ってたんだ。なんだったらそいつが卒業するまで大阪まで送ってもらってた」

「全部捨てられてると思ってたのに! こんな大事にしてくれていたなんて!」