十六夜月のラブレター

最初は動揺を隠せないでいた入谷さんが自虐するように口を開いた。

「でも、雪見ちゃんだと気付けなかった俺が悪い。君が一番嫌がる外見でしか君を見ていなかったんだから」

「それは! ちゃんと会ったこともなかったんだから仕方ないです」

「俺さ、いつも遠くから君を見てたんだ。まるで手の届かない夜空で輝く満月を見るかのように」

「えっ?」

「あの頃の俺は親の離婚問題で心が壊れてた。思春期ど真ん中だったし。この世に永遠の愛なんてないんだって」

入谷さんがそんな気持ちを抱えていたなんて……。

「そしたらさ、中学校の階段の踊り場に図書室便りが毎月掲示されてて。何気に読んでたら、そこに書かれてた『今月の図書』のコラムに元気をもらうようになって。誰が書いてるんだろうって気になって同じクラスの図書委員やってる奴に聞いたら、君だって教えてくれた」

「あのコラムをちゃんと読んでくれていた人がいたなんて、思ってもなかった」

入谷さんが小さく笑う。

「それから意識するようになって。図書室で本を読んでいる君を本棚の陰から見たりして。雪見ちゃんの家に行ったのも、君の家に行ってみたかったから」

ダメだ! 知らないことばかりで思考停止しそう!

「ヤバイよね。でも話しかける勇気がなかった。きっと俺みたいなタイプは嫌いだろうなって。だけど、親が別居することになって急遽大阪へ行くことになって。どうしても君と繋がりたかった。だからあの公園に呼び出したのに、こんなことになるなんてね」