「あたし、どうしても柊哉先輩のことが好きで。月見ちゃんに獲られるのが怖かった。月見ちゃんはあたしと違ってなんでもできて。あたしずっと、月見ちゃんの隣にいるのが辛かったから」
そんな! ずっと隣にいるのが辛かったのは私の方だと思っていたのに……。
「柊哉先輩、大阪に戻るって言ってた。今ならまだ間に合うかも。月見ちゃん、今から柊哉先輩に会いに行って」
「何言ってるの? 雪見は入谷さんが好きなんでしょ?」
「好きだよ。でも、あたしじゃダメだから」
雪見は鞄の中から一通の古びた封筒を取り出して私に渡した。
封筒はすでに開封されていて宛先は実家の住所の私宛。
消印を見ると10年以上前に大阪市内から投函されたものだ。
封筒を裏返す。そこには差出人として「斉木柊哉」という名前が書いてあった。
「これってもしかして入谷さんからの手紙なんじゃ!?」
雪見は小さく頷いた。
「月見ちゃんが実家を離れて高校の寮に入っている時に届いたの。それを見たあたしは不安になって。中を読んでしまった」
ああ……私達姉妹はどれほど罪深いのだろう……。
「月見ちゃんに成り済まして返事を書こうとしたけれど、あたしには到底無理だった。だって、あたしには月見ちゃんみたいな文章は書けないもの。偽者だってバレてしまう」
もし同じことをほかの人がしていたなら怒りに任せて責め立てただろう。
けれど、雪見を責める気にはなれなかった。
まるでいつも比べられ傷付くことに酷く怯えていた自分自身を見ているようだったから。


