十六夜月のラブレター

10分程経つと雪見が一人で部屋に来た。入谷さんは帰ったようだ。

「ごめんね、月見ちゃん。突然押しかけて」

「全然いいよ。それよりどうしたの?」

「友達から柊哉先輩が大阪から東京に戻って来たって聞いて。そしたら会社が月見ちゃんと同じだったから、知ってるかなと思って」

「じゃあもう私の役目は終わっちゃったね」

「来週末に会う約束したの」

「そうなんだ」

これでもう、お好み焼きパーティーもお仕置きデートも中止になるだろう。

「今日って会社お休みだよね。どうしてこんな時間まで先輩と一緒にいたの?」

「私ね、入谷さんに雪見と間違えられてたの」

「えっ?」

「雪見だと思われてたから俺のこと憶えてない?って言われて。でも人違いだから憶えてるわけもなくて。会社だとゆっくり話せないから今日会っていろいろ話してたの」

「月見ちゃんは先輩のこと、憶えてないの?」

「憶えてないどころか知らない人ってかんじ」

「そっか。月見ちゃんは知らないだろうけど、先輩はその当時からすごいモテてて。あたしも友達を通じて仲良くなって遊んでもらってたの」

「そうだったんだ」

「柊哉先輩、あたしのことなんか言ってた?」

「友達だって言ってたよ」

「あたしね、先輩が好きだったの。そして、今も好き」

「えっ?」

「あたしたち恋バナとかもしたことないもんね。月見ちゃんは、先輩のこと好き?」

「私が!? そんなわけないない!」

「それなら、あたしの恋、応援してくれる?」

「もちろん!」

「よかった。約束よ。それを伝えたくて。じゃあ帰るね」

「それだけのために来たの?」

「うん。柊哉先輩にも会えたし。月見ちゃんが先輩のこと好きじゃないならよかった。それじゃあね」

そう言って雪見は帰って行った。

雪見は天真爛漫で優しい子だけれど、欲しいものは手に入れるまで諦めない一面も持っている。

明らかに雪見は私を牽制しに来た。

入谷さんを好きになるなと。

私は雪見の恋を全力で応援すると心に決めた。