ゴールデンウイーク休暇明けの爽やかに広がる青空の下。

オフィス最寄りの地下鉄の駅の階段を昇り高層ビル街を歩く私の足取りは重かった。

会社、行きたくないな。

許されることならずっと、一日中パジャマのままポテチ食べて映画とかゲーム実況とか動物の動画見ていたいな。

地味で陰キャでインドア派の私にとって、会社に行くその面倒臭さたるや何度も飛行機を乗り継いで地球の裏側のブラジルに行くのと遜色ない。

昨日の休日最終日も深夜まで動画見ちゃったし。

眠い目を擦りつつ、営業事務として勤務する大手建材メーカーのオフィスへと辿り着く。

高層ビルのエレベーターに乗り営業部営業第二課のフロアに着くと、いつになく女子社員たちが色めき立っていた。

地味な私とは違って、いつもメイクも髪型も服装も完璧で素敵なキラキラ女子の皆さんがきゃあきゃあ騒いでいる。

普段からそういう輪の中に入らない、いや、入れない私でさえ何が起こったのかと気になるくらい。

その原因は、彼女たちの視線の先を追うとすぐにわかった。

そこにはスラリと背が高く色白で、細身の体にシングルのスーツをサラリと着こなしている男性社員がいたから。

長めの黒い前髪が切れ長の涼し気な瞳に少しかかっているのが物憂げで、儚さも備え合わせているようなイケメンだ。

営業二課の課長が彼をフロアの皆に紹介した。

「えー、皆さんおはようございます。こちら、今日から大阪本社から我が東京支社営業二課に異動してきた入谷君です。入谷君は大阪本社で2年連続で営業成績トップの大人材です。皆さん仲良くやっていきましょう」

「入谷柊哉です。入社7年目の28歳です。よろしくお願いします」