「はい、経理部管理課の河村です」
軽やかな声が聞こえる。今日も河村陽菜は可愛い。
にやけまいと蓮は表情に力を入れた。眉間にグググッと皺が寄る。
あれから三週間経ち、陽菜は伊達眼鏡をかけている。レンズは入っているが度はない。
周りには「河村の様子がおかしかっのは、視力のせいだったのかもな」と雑談で交えた。そうすれば今までの不自然さも、なんとか誤魔化せるのではないかと思ったからだ。
単純だが上手くいった。
陽菜は「ありがとう」と感謝をしてくれたが、実際は彼女の力だ。真面目にコツコツと仕事に取り組んできた彼女だからこそだろう。
そうして「朝倉くんに相談して良かった」と笑顔もくれるようになった。
可愛すぎないだろうか。
幼い頃、神主の父親が『神様には常にありがとうと感謝しなさい。神様も嬉しくなる』と言っていたが、これは本当のことだったんだなと実感している。
「はい、それでは失礼します」
音声チャットを終えた陽菜が、顔を上げて蓮を見つめる。ずっと見ていたことがバレたのだろう。
すぐさま蓮は『可愛い、好きだ』と心で念じた。すると数メートル先にいる陽菜が動揺し、素早く背を向けた。
今日も河村陽菜が可愛い。
恋をすると仕事が捗る。定時までに終わらせて、今日も陽菜と寄り道して帰りたい。そして今日こそ告白して、付き合ってもらうのだ。
好きだと言おうとすると、陽菜が真っ赤な顔で邪魔をしてくる。「待って、心の準備が」と言って躱してくる。
――なんとかしないと。
蓮の手は猛スピードで数字を打ち込んでいく。集中すればするほど数字の世界にのめり込む。
関数を打ち込み、報告書を作成すると、管理課の方から陽菜の声が聞こえてきた。
聴力というのは不思議だ。雑音は省くのに、好きな人の声なら脳が喜んでキャッチをする。
「田中くん、領収書忘れてるよ」
「ええ〜、河村スキャンしておいて」
「私に文句を言わないで」
「えっ、俺、なにも言ってない……」
「顔に書いてある! バレてるよ」
「は、はいっ、すぐにします!」
なかなか陽菜も手強くなった。
笑顔を交えつつ時に強気でいけとアドバイスをしたら、素直に実践している。
それに蓮との告白の応戦で、陽菜に瞬発力がついてきた。すぐに反論して立ち向かってくるのだ。
この恋愛は絶対に勝たないといけない。
いつの間にか陽菜に対して、本音で話すのも慣れてきた。心の声が聞こえるのなら隠しても仕方がない。そう思えるようになった。
素直でいることが難しいと思っていたのが嘘のように、彼女の前では自然体でいれる。
軽やかな声が聞こえる。今日も河村陽菜は可愛い。
にやけまいと蓮は表情に力を入れた。眉間にグググッと皺が寄る。
あれから三週間経ち、陽菜は伊達眼鏡をかけている。レンズは入っているが度はない。
周りには「河村の様子がおかしかっのは、視力のせいだったのかもな」と雑談で交えた。そうすれば今までの不自然さも、なんとか誤魔化せるのではないかと思ったからだ。
単純だが上手くいった。
陽菜は「ありがとう」と感謝をしてくれたが、実際は彼女の力だ。真面目にコツコツと仕事に取り組んできた彼女だからこそだろう。
そうして「朝倉くんに相談して良かった」と笑顔もくれるようになった。
可愛すぎないだろうか。
幼い頃、神主の父親が『神様には常にありがとうと感謝しなさい。神様も嬉しくなる』と言っていたが、これは本当のことだったんだなと実感している。
「はい、それでは失礼します」
音声チャットを終えた陽菜が、顔を上げて蓮を見つめる。ずっと見ていたことがバレたのだろう。
すぐさま蓮は『可愛い、好きだ』と心で念じた。すると数メートル先にいる陽菜が動揺し、素早く背を向けた。
今日も河村陽菜が可愛い。
恋をすると仕事が捗る。定時までに終わらせて、今日も陽菜と寄り道して帰りたい。そして今日こそ告白して、付き合ってもらうのだ。
好きだと言おうとすると、陽菜が真っ赤な顔で邪魔をしてくる。「待って、心の準備が」と言って躱してくる。
――なんとかしないと。
蓮の手は猛スピードで数字を打ち込んでいく。集中すればするほど数字の世界にのめり込む。
関数を打ち込み、報告書を作成すると、管理課の方から陽菜の声が聞こえてきた。
聴力というのは不思議だ。雑音は省くのに、好きな人の声なら脳が喜んでキャッチをする。
「田中くん、領収書忘れてるよ」
「ええ〜、河村スキャンしておいて」
「私に文句を言わないで」
「えっ、俺、なにも言ってない……」
「顔に書いてある! バレてるよ」
「は、はいっ、すぐにします!」
なかなか陽菜も手強くなった。
笑顔を交えつつ時に強気でいけとアドバイスをしたら、素直に実践している。
それに蓮との告白の応戦で、陽菜に瞬発力がついてきた。すぐに反論して立ち向かってくるのだ。
この恋愛は絶対に勝たないといけない。
いつの間にか陽菜に対して、本音で話すのも慣れてきた。心の声が聞こえるのなら隠しても仕方がない。そう思えるようになった。
素直でいることが難しいと思っていたのが嘘のように、彼女の前では自然体でいれる。
