姫と騎士のめぐりあい

その夜。
静かな庭園の噴水の前。

月明かりの下で、
エリザベートはエーリヒと並んで立っていた。
昼間の緊張が嘘のように、
心が穏やかだ。

「お父さま、お母さま……あんなに優しい顔で祝ってくださるなんて。」
「君を愛している人たちばかりだ。君が幸せになれば、皆も嬉しいんだよ。」

そう言うと、
エーリヒはポケットから
小さなベルベットの箱を取り出した。
「……それは？」

開けられた箱の中には、
淡いピンク色のダイヤモンドが光っていた。

「エリザベート。改めて、君に誓いたい。」
彼は片膝をつき、
月光を浴びる彼女の瞳を見上げながら、
穏やかに微笑んだ。

「これから先の人生、どんな時も君の笑顔を守る。君の幸せが、俺の生きる理由だ。」

指輪はオーバルカットのピンクダイヤ。
台座には、エリザベートの象徴
——小さなミツバチの彫刻が施されている。
それは王女でありながら、
人々のために働き、
愛される彼女そのものの姿だった。

涙をこぼしながら、エリザベートは頷いた。
「はい……わたしも、あなたと生きていくわ。エーリヒ……愛しています。」

彼が指輪をそっと彼女の薬指にはめる。
その瞬間、噴水が風に揺れてきらめき、
まるで世界そのものが
二人を祝福しているかのようだった。

エリザベートは微笑みながら彼に抱きつき、
「……夢みたい。でも、これは現実なのね。」
「現実だよ。俺たちの、永遠の夢のような現実だ。」

そして、二人は静かに唇を重ねた。

春の夜風が甘く香り、
ミツバチの紋を刻んだ指輪が、
月光の中で優しく輝いていた。