姫と騎士のめぐりあい

エーリヒがエリザベートに駆け寄ろうとした
まさにその瞬間、
低い声が部屋を切り裂いた。
「来ると思っていたよ、マグノリアの騎士。」

闇の奥から、ヴァルタザールが姿を現した。
かつて学友として見せた穏やかな微笑みは消え、
その瞳には黒い炎のような憎悪が宿っていた。
「ヴァルタザール……あなた……なぜこんなことを?」
エリザベートは信じられないというように呟く。
彼は優しく笑い、
だがその声は氷のようだった。

「なぜ?——君がこの国にやって来たからだよ。君は知らないようだが俺たちは従兄妹だ。君の母は俺の母の姉にあたる。君の母が大国の王妃として何もかもを手に入れた一方で、俺の母は革命によって全てを奪われた。家も、誇りも、未来も。だが君や君の母は、愛され、祝福され、何一つ失わずに生きてきた。それが、どうしても許せなかった。」

エリザベートの顔が蒼白になる。
「私を……最初から利用していたの?」
「利用?違う。君は“奪い返すための鍵”だ。」
彼は手にした短剣を見つめながら続ける。
「母が望んだのは、異母姉ジゼルの幸福を壊すこと。君を奪えば、ジゼルも、マグノリアも、ハイドランジアも崩れる。それが——復讐の完成だ。」

「やめろ!」
エーリヒの叫びが響き、刃がぶつかる。
火花が散り、床に血が落ちた。
ヴァルタザールの動きは速く、鋭く、
まるで憎悪そのものが剣を操っているようだった。