姫と騎士のめぐりあい

修道院を包む霧が段々と薄れてゆく。

石壁の向こうには、
マグノリアとハイドランジアの連合部隊が
その時を静かに待っていた。

クラウス王子は馬上で剣を抜き、
低く命じた。
「——王女殿下を、必ず生きたまま奪還せよ!」

エーリヒはその言葉に黙って頷き、
剣の柄を握り締めた。
心臓が焼けるように熱い。
あの夜、彼女を守れなかった自分を、
今度こそ赦さないために。

号令が響くと同時に、
火薬の匂いと金属音が修道院を裂いた。
扉が蹴破られ、闇に光が走る。
叫び、命令、刃の音。
亡国派の兵たちは必死に抵抗するが、
数と練度の差は歴然だった。
クラウスの指揮で中庭が制圧され、
エーリヒは地下へと突き進む。
——彼女がいる。必ず。

階段を駆け下り、奥の牢の扉を蹴破ると、
そこにはろうそくの灯に照らされた白い影
——エリザベートがいた。
薄い寝衣のまま、鎖につながれた姿。
「リサっ!」
エーリヒの叫びに、彼女が顔を上げる。
その目は怯え、でも確かに彼を見た。

「エーリヒ……!」
彼女は声を震わせ、
縋るように立ち上がろうとする。
しかし鎖のせいで満足に動けない。